011:柔らかい殻



侑士が僕の髪を梳く。


長くて節ばった指で、繰り返し、繰り返し。

うつ伏せた背中に君の腕があたたかい。

シーツ越しにも。


…あたたかさが、羽根布団みたいだ、なんて、

ぼんやり思っていると、きゅっと、つまんだ髪を引っ張られた。


「いたいよ」


「寝たらあかん」


眠くなるようなこと、したの、そっちだよ。


僕はヤドカリみたいに、シーツの殻に引っ込もうとした。

「あかん言うとるやん」

「重いぃ」

じたばたしてみても、侑士の脚が、脚を、

腹が腰を、押さえ込んで、動けない。


…あ。重いけど…、あたたかい。

体温が、僕を包んでる。

やわらかな波のように、眠気が僕をさらっていく。


「周助…」


耳朶の後ろから滑り込む囁きも、夢のように、やわらかい。

「寝てもええけど、上、向き」


侑士が体をひねり、僕をひっくり返した。


「これでええ」


シーツでくるみ直した上から、抱き締める。

一瞬離れた温もりが恋しくて、僕も身をすりよせる。

また、指は髪を梳き始める。


「離しちゃ、やだ」

「もうせえへん。これでええんや」


小さなキスが触れる。

「さっきの格好やと、これ出来ん」

「ん…」


唇が触れ合ったまま、僕は眠りに落ちていった。


Fin.


…あまっ。