022:MD
空が高くて、ボールの黄色が少しだけ、褪せてきたように見えると、
夏は終わったと思う。
僕はプレイヤーに「Early Autumn」を突っ込んで、
ゲッツのフレーズの心地良い冷たさに身を委ねた。
君と聴いた、君が好きだといった曲が
少しずつヒットチャートから入れ替わり、
街からも消えていって、
不意に泣きたくなるようなことは減ってきたけれど、
まだ、僕は、かさぶたの下に食い込む切なさから
身を守るヘッドフォンを手放せないんだ、英二。
君といない季節は何の色もなく重なって、
君がいた風景もぼかしてくれないって、困ったね。
君と聴いたことがない音楽、
君が見たことのない新しい服にも、
僕は君の声を聴いてしまう。
「こんなのつまんないじゃん、不二」
「それ似合ってる、好き」
君に貸したシャツの替わりに、買ったものだからかな。
あれを君はどうしたんだろう。
もう僕のものだなんて思い出さずに、
着ていそうだね。
...そうであってほしいよ。
僕がぼろぼろでも、
君は変わらずに、眩しく輝いていてほしい。
夏が過ぎても、
あの夏の午後のプリズムのように。
Fin.