034:手を繋ぐ



「なんで、こんなことするんだよ!」


喉が掠れて、囁くような声しか出ない。


「ごめんね、英二」


不二のベッドの脚と、俺の両手首と足首は、裂いたタオルで繋がれている。

どっしりとしたベッドは俺がもがいても、びくともしない。

不二が身を屈めてきて、次は何をされるのかという恐怖が身を竦ませた。

でも、不二はベッドの傍に膝をついて、俺の胸に顔を埋めただけだった。

顔は見えないけれど、深く呼吸をついている耳のあたりが震えている。

そして俺のシャツに温かいものが沁みてきた。


「これしか思いつかなかったんだ…

こんなことしても、なんにもならないのに…

もう、抱きしめてもらえないし、キスもしてもらえないけど、

こうすれば、英二の匂いがして、英二に触れ…られて、

…英二はどんどん、もっと、…僕を嫌いに…なるよね」


斬首を待つ死刑囚のように、

俺の横でうなだれている不二の顎から、

ひっきりなしに雫が落ちる。


「僕のこと、忘れられなくなったよね」


君のものになれないなら

せめて君の傷になって、

君の中にいたいんだ。


途切れ途切れの不二の言葉が胸を切り裂く。

何をどこで間違えて、

俺達はこんなに、

悲しくしかいられなくなったんだろう。



Fin.


このタイトルでは普通ほのぼのですよね…すいません…