045:年中無休
(ダメだよ?お花ちゃんsをフリーにしちゃ?)


「で、」と口を切ったものの、大石は言葉に詰まった。

「何さ」

目の前の二人はくすくすと、キラキラ光るような笑いをこぼしながら、

細い指を絡め、すべすべの頬を触れ合わせて、大石を見ている。

「おい、手塚」

目を閉じて腕を組んでいるもう一人の被害者は、いかにももの憂げに呟いた。

「お前ら、どういうつもりなんだ?」

「どういうって…」

「ねえ?」

「なんていうか弾みだし」

「つもりっていうほど何も考えてっていうんじゃないよね」

「雨でつまんなくて」

「大石も手塚も生徒会で遅いし」

「不二の顔近くでみてたら、キレイだなーvって。そんで、唇やわらかそーvって。そしたら触りたくなるじゃん」

「英二の眼がもうキラッキラしてみてるんだもん、至近距離でさ。カワイイじゃない?もう、キスされても仕方ない」

「不二、いーにおいするんだ、そんで頚なんかほっそくて、どこもすべすべでやーらかいの」

「英二だってどこもプリンみたいにさわり心地いいんだよねv」

「そしたら段々ボタン外しちゃって見て触りたくなるし」

「外されたら外さないと、僕だけ裸ってのもヘンだし。でも英二意外に逞しいんだね下半身」

「不二がそういう露骨なこというから興奮しちゃって」

「いきなりいれようとするから焦ったよ」

「…お前が下なのか?!」

「だって、普段と同じじゃつまんないじゃん」

「新鮮だったよね、すごく」

「だから浮気っていえないんじゃん?」

「そうだよ僕、英二にツッコンでないし」

「あのな英二…じゃあ、俺が手塚を…手塚と、そんなことになったらお前どう思う」

「うーん、グロい」

「はあ?!」

「絵的にいやだよねー」

「俺らはどっちがどっちでも、くっついてても、絵になるじゃん?なんていってもお花ちゃんSだし」

「でも大石と手塚って寒いよね。ムードゼロ」

「大体勃つの手塚で、大石は?」

「言っちゃなんだけど、マグロだよ手塚。それを散々ああしてこうして喘がせて恥ずかしいこと言わせる芸なんて大石にあるわけ?」

「そうだよ、おーいしだって、俺がいっつもジッパー下ろして、握ってく…んー、ふぁひぃすんらよおーいひー」

手塚はこめかみを揉んだ。

生徒会が終わって、部室に行ってみると、鍵がかかっていた。

部活は休みだが、中で声がしていた。

「あ…ん、不二ィ」

「英二、まだ、ダメだよ…一緒、に」

手を出すと、大石はためらいながら、鍵を渡してきた。

がちゃりと廻る音にも、声は止まない。

テーブルの上で。細い胴の上に跨った、桃色の脚。

汗に濡れた髪をかきあげ、不二は、いつもと変わらない笑みを手塚に向けた。

そこで交わった記憶が何も動いてないように見える、手塚の表情の乏しさを、いつものように面白がっている。

菊丸も、部活中に注意されるときと同じ顔で、大石の視線を捕らえようとしている。

「なんか、乗れなくなっちゃった」

「まだ乗ってる癖にー」

「あはは、とりあえず、おしまいにしよ、英二」

「ちぇー、もう少しでイけたのにぃ。おーいしが悪いんだから」

シャツのボタンを嵌め終えて、菊丸が口を尖らせて見せる。

「俺のことほっとくんだもん。テニスも出来ない日なのに」

「だ、だって生徒会じゃないか、俺だって好きで行ってるわけじゃないぞ英二」

「ふふ、この構ってちゃんを放っておくにはそれなりの覚悟が要るんじゃない?」

「そーだにゃー」

ごろごろと、不二の首に抱きついて甘える顔は、立ちこめている青臭い匂いとは無縁にしか見えない。

「悪いことをしていると思わないなら、叱っても無駄だ」

「だが、手塚!」

「おーいしぃ、続きしよ?俺、欲求不満」

上がりかけた眦は、あっさりと、じゃれつく猫に下げられてしまう。

「手塚も、僕を攻めてみる?」

冷たくて、柔らかい唇が首を這う。

大石と目があって、手塚は首を振った。

「帰るぞ」

「ああ」

「えー?別々にすんのぉ」

「今日のところは、こんなもんだよ、英二」

「ん、了解」

ダメだよ?僕らを放し飼いにしちゃ?

Fin.


一応大菊、不二塚前提で。'