エクスタシー温泉Revolutions Vol.2
「洗ってる暇ありませんから」
手品のように出てきた輪ゴムで、八戒は雫の垂れる紅い髪をくくり上げた。
「サンキュ、もういいよな」
誰も居ないので、シャワーを二つ使って浴びていた悟浄は、
まだ震えながら湯槽に滑り込む。
「お前も早く入れよ、結構濡れたろ?」
八戒が、汲んだお湯を数杯かけて、悟浄の隣に体を沈めると、
がらりとガラス扉が開いて、やはり服を脱いだ三蔵が入ってきた。
「着替え、わかりました?」
「宿の方で新しいどてらと浴衣、そこに置いていった」
「下着も要るんですけど」
「てめぇらのパンツなんか探せねえよ。部屋までだろ」
「いやん、危険v八戒、俺どうしよv」
「大丈夫ですよ、貴方のお宝は僕が命がけで守りますv」
眉間にめりこみそうな皺を寄せた三蔵は、
湯槽の反対端に身を入れて、俺を振り返った。
「爺さん、来ねえのか?」
「うん、今急にお湯に入らない方がいいって息子さんが言って、
部屋あっためて寝かせて、お医者待ってた。
血圧が高いんだって。
落ち着いたらお礼に上がりますって言ってたよ、悟浄」
「別にいんだけどな」
「貴方って人は…」
くすくす笑いながら、八戒はゴムから落ちる髪を優しくつまんだ。
「人助けが癖になってますね」
「なんでだろ〜♪ってか。…あー、やっと人心地ついてきたわ。
さっき風がピューーッと来たときマジ凍ったぜ。おっしゃ!」
ざばりと出ると、悟浄は勢い良く髪を洗い始める。
「温泉って最近どこ行っても炭石鹸とシャンプーですねぇ」
湯槽の縁に顎を載せて、八戒が呟いた。
「どうもバサバサするんで気にいらねえ」
「あーそれで毎回マイシャンプーリンス持って来るんですね三蔵」
「悪ィかよ」
「いえいえ、やっぱり気にしてるのかなーと…そっち…」
「やかましいわ!」
「三蔵の声が一番大きいじゃないですか、ねえ悟空」
なんでそこで俺に振るかなあ…
返事する前に、がらっと扉が開いた。
腰にタオルを巻いた若い兄ちゃんが、ボディブラシをぶら下げて、
鼻歌まじりに入って来た。
不思議なブルーっぽい頭の前髪が長い…
ビジュアル系って、死語かな?
(後で八戒が言ってた『あんぐら劇団』っていうのはもっと死語だって三蔵が言ってた)
蛇口の列に歩いてきて、ぎょっとしたように止まる。
洗った髪をまた縛って上げ、体を洗っているのは悟浄一人だ。
「あ、やべ、あのぅ、ご家族…で貸切でした?俺、入口全然見ないで来ちまったから…」
ボディブラシを抱え、真っ赤になって立っている兄ちゃんが、何を言ってるのかって、
俺たちはぽかんとした。
次の瞬間、八戒がのけぞって笑い出し、三蔵まで噴き出す。
悟浄も、体を二つに折って笑いながら、汲んであったお湯で体を流した。
「あのな、兄ちゃん、俺の髪見て間違えちまった?
悪いけど、俺立派にオ・ト・コだし。
なんなら、近く来て見る?絶対あんたよりご立派よ?」
「い、いえ、遠慮しますっ!」
兄ちゃんは滑って転びかけながら逃げていった。
「俺の背中、そんなにセクシーコマンドーだったかしらんv」
「ええ、もう僕の、わっぷ!」
三蔵は八戒にばしゃんとお湯をぶっかけ、上がった。
「もう、漫才の客はいねえぞ。先上がる」
「俺も!のど渇いた」
ものすごい速さで着替えて出ていく三蔵をおっかけると、
廊下の自販で缶ビールを買ってくれた。
「…実際、貸切ってかけた方がいいかもしれねえな。
奴らおっぱじめかねん」
「でも、この旅館貸切ないよ」
「…冗談だ」
続く
あっ、ご一行はゴハンの後だった…でも直すのめんどくさいからこのまま。
今回の加工はお許しを得てMPさんの手法を真似させて頂きました。
今回の写真は私が撮った奴です。実際、いくつかの檻の中に温泉があるんです。
NNさんはセンスがいいのでこんな誂えたようなあほな絵面は撮られませんでした。名誉のためにお断り(笑)
次回そろそろ観光の話をしないとなぁ。
ところで今回字を確かめようと2巻を見直して始めて雀呂って「ザクロ」って読むのに気付きました。すずろだと思ってた…マージャンもあさすずめですね、それじゃ...
へたれたままに名前は出さない設定になりました。でも雀呂さんのつもりでお読み下さい。
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