バニラ


背中に、午後の光より温かいものが貼りつく。
ぱらりと、雑誌をめくる音。
シャツを畳みながら、僕はそっと、悟浄の呼吸に自分の呼吸を合わせてみる。
僕より短く刻む、規則正しい満ち干きは、何だか寂しかった。
何で、何が寂しいのか説明はつかないのだけれど。
最後のタオルを横に積む。
と、長い腕が伸びてきて、一番下に置いたシーツを掴み、洗濯物をぶちまける。
「何し…」
僕の抗議は、良い匂いのする肩にぎゅっと押しつけられた。
「床もあったけーし…これもイイ匂いするし…超キモチイイっしょ」
抱きしめられて、床に転がった僕と悟浄を、シーツが包んでいる。
僕の首筋に、鼻をすりつけ、息を詰めている悟浄。
怒られるかな?と窺っている大きな子供。
子供のときに、子供でいられなかった僕達だけれど、
貴方だけは、もう一度、ゆっくり大人になって下さい。
「ええ、気持いいですね…寝ちゃいそうですよ」
柔らかくなっている僕の顔に、嬉しそうに見入る。
「いいじゃん、寝ちゃお?」
小さなキスが、先刻の僕の寂しさを嘘のように溶かす。
溶けていくアイスクリームのように、僕らは怠惰な眠りに陥ちていく。

Fin.


乙女じゃありません!おかーさんです!
この後、さっきまで寝ていてすぐ目を覚ます悟浄は、はっちんが寝入っているのがつまんなくて、
鼻つまんだりして起こして怒られます。