006:ポラロイド


「これ、どーする?」

「お前が持っとけ。」

「じゃ、また。どっかで。」

「嗚呼。」

いつものようにあっさり別れた。


悟浄の手元にはさっき店長が撮ってくれた写真が残っている。

店内の柱の一部に常連客のスナップを飾っているのだが

悟浄と三蔵の「二人は絵になるから是非」とチェキを持ち出した。

三蔵は洗いざらしのグレーのコットントレンチコート、悟浄はM-65を着せられた。

「あ〜やっぱり絵になるな(笑)」

満足げに撮り終わると1枚悟浄達によこしたのだった。





悟浄は写真を財布にしまい込むと、暫く三蔵の後姿を見つめた。

今日買った深紅のTシャツを着ているヤツの姿を思い浮かべた。

いつも、紺とかグレーとかばっかり着ている印象があるから、ドキっとした。

育ちにコンプレックスを持つ悟浄にとって、

時折垣間見る三蔵の育ちの良さが

例えば、そんな色の趣味にも表れているような気がしてならなかった。

「でも、地味じゃん。」

小さく呟くと、さっき買った服のレシートに携帯番号を

殴り書きして走った。

「お〜い、三蔵!」

怪訝そうな顔をして振り向く三蔵にレシートを渡すとこう言った。

「また、時間有る時でも遊ぼうぜ。毎日、仕事ばっかだとストレスたまるっしょ。」

「.....だな。」

「それ、捨てるなよっ。じゃあ。」

肩に手を回し三蔵の耳元でそう囁くと、足早に悟浄は走り去った。

シェビニオンの匂いが微かに香った。

三蔵は立ち止まり、レシートの慌てた数字の列を見た。

下二桁が自分の番号と被っていて、それが妙に可笑しかった。

「どういうつもりなんだか.....」

無くさない様に、手帳に挟んだ。

三蔵は冷静を保とうとしていたが、どうにも顔が綻んでくるのがわかり

急いで家路を辿った。

「........」

携帯などいつもはその辺に投げて置くのに、今日に限って握り締めている。

いつかかってくるか

いつかけようか


二人が二人、同じ事を考えていた。



007:毀れた弓


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