016 :シャム双生児


懐かしい香りの後姿に手を振った。

「すげーお似合いじゃん。」



ちょっとだけ思い出した女の肌の感触.......

「どうして今日は一緒にいれないの?」


〜そんなこと言っといて悟浄とはそこまで深くないって(笑)

かと言って四六時中一緒だったら、いくら好きでもイヤになるってか。

解んねぇ...深い関係って一体なんだよ、あほくさっ。〜

女を見送った後、ビデオの棚の間をさまよいながらそんな事を考えていた。

タイトルを適当に追いながら移動すると、今度はカルトコーナーに出くわした。

「気分じゃねーって。」



前に遊び仲間が冗談で言った言葉を思い出した。

〜「この前ナンパした女ってば、ちょっとストーカー入ってない?
  1回寝たっけメールにいきなりハート乱舞だし、連打だし。
  あのタイプ邪険にしたら呪いかけられそうじゃん(笑)
  自分とくっ付いて離れられなくなる呪い。離すと女だけ助かって俺はあの世行き。
  仕方ないから開き直って二人でサイドショーのスターになるってぇのはどう?」〜

〜「まさにフリークスの世界だなっ!(笑)」〜

〜「すんげぇポジティヴだろ(笑)」〜

聞いていて不快になったので余計覚えていたのだ。

五体満足な人間が少数であれば奇形と呼ばれる人間のほうが普通の姿だろうに。











結局めぼしいものも無く外に出た。

道は車の数も減り悟浄のバイクの音が妙に鳴り響く。

途中三蔵が倒れたコンビニに寄って朝食を調達した。

三蔵ちゃんと飯食うんだろうか?

会社でどんな顔して仕事しているんだろうか?

眉間に皺寄せて厳しい表情しているのだろうか?

倒れなきゃならないほど過酷な労働なのだろうか?

そんな中で悟空とか言うヤツに笑顔で接しているのだろうか?



三蔵.........




三蔵が俺に聞いてこないから、俺も三蔵に聞いていない。

知っているような気になっていたが全然知らなかった。

縮まったような距離が只の錯覚でしかなかったのかと思うと

もどかしさと切なさで一杯になる。

悟空と言うヤツの方がずっと三蔵に信頼されているんだなぁ。


部屋に帰るとそのままベッドに倒れ込んだ。


なんとなく一人寝が辛いって.......



「ねぇ、そう思わねぇ?」


取り出したポラロイド写真の三蔵は照れ隠しな顔で

目線を外したままだった。


017: 

(上記タイトル『ルート』がもし文字化けするようでしたら、お手数ですがお知らせ下さい。
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015

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