Every Breath You Take



この頃、どうも の様子がヘンなんです。

野宿のとき、食事が済むといつも一人で
コソコソと皆から離れて行きしばらく戻らないし…

なぜか、大きい懐中電灯をいつも持って。

追って行こうとすると、何かと他の三人が邪魔をします(それはいつものことですが))。



宿で部屋割りをするとき、一人部屋が取れないと即、

「私、悟空と一緒がイイ!」

部屋の前で、ドアの中に耳を澄ませてみても、
悟空のイビキしか聞こえないとはいえ…
かなり遅くまで、灯りが消えないのが気になります。

一人部屋が取れるときも、挙動が不審で…
今までなら、僕がそっとノックすれば、すぐ返事と笑顔が返ってきたのに。

まず、一度ではノックに気付きません。
二度、三度のノックでやっと返事をするけれど、鍵を開けるのは
(それまで鍵をかけ忘れてばかりいたのに)
いつもバサバサ、ガサガサと慌てた物音の後。

何か(誰かでは無いことは確認済み…そこは僕に抜かりありません)
隠しているモノがあって、何処に隠しているのかも、大体判ります。

その時々で違いますが、大体、ベッドの下か、タンスの中、お風呂場の戸棚の中。

キスをしていても、 の視線が気になってしかたないように、
隠し場所に泳いでますから、バレバレです。
(もちろん、10秒もすれば、 の瞳は、僕だけを見つめてとろけるんですけどv)



が眠ってしまったあとに、探し出すのは簡単なんですが…
があんなに必死で隠していることを覗いてしまったら、きっと は傷つきますよね。
だから僕が見るわけにはいきません、が…


「三蔵、これ、 の部屋に持っていって貰えませんか?僕の荷物に紛れこんでしまって」

「何で紛れこむんだよ、部屋も同じじゃねェのに」

の洗濯物からくすねたんですが、そんなことは三蔵は知る必要はありません)

口先では文句をつけても、 の部屋に行く理由が出来て嬉しそうな三蔵。
いきなりドアを開けました。

(あ、今日の宿は古くて、鍵がかからないのは調査済みですv)

「わーっ、三蔵、何いきなり入ってくるのよぉ!」

「これ持ってきてやったんだろうが…何やってんだ、お前…」

「これって?え、何で三蔵が?!バカーッ!生臭坊主ッ!」

バッシーン!ガチャーン!

部屋から飛び出した三蔵の後頭部に、コップがジャストミートしています。

やはり
シ〇―ツを持たせたのはちょっとやりすぎでしたね。
小さく畳んでおいたので、三蔵には判らなかったようですが。

三蔵の機嫌は最悪になって、部屋で見たことは意地でも話してくれませんでしたし…

悟空から聞き出すのは簡単なんですが、
僕が聞いたこともすぐ に喋ってしまいますし、
も用心していて、悟空が眠ってからしか、何かしないらしく…

そのせいで、 は睡眠不足が慢性化しているようです。
今日も、ジープの後部座席で居眠りを始めました。

!悟浄の方に傾いちゃ駄目です!

悟浄、僕の の肩を抱こうというんですか?イイ度胸です。
運転するときは前を向け?だったら手を離しなさい。

あ、三蔵、悟浄を撃つんなら に血が飛ばない方向にお願いしますねv。



数日振りの街は、かなり荒れ果てていましたが、何とか営業している宿が見つかりました。
お客もいなくて、めいめい一人部屋です。

食事を終えて、皆部屋に引き取ってすぐ、遠慮がちなノックの音。

「八戒、いい?」

「どうぞ」

入ってきた は、後ろ手に何か、隠しています。

「メリークリスマス、八戒」

膝に、ふわりと柔かなものが載りました。
濃いグリーンの毛糸で編んだ、手袋と、マフラー。

クリスマス…忘れてました。この頃は、カレンダーもない旅でしたし。
手袋をはめてみました。ぴったりです。
がマフラーを巻いてくれます。


「すごく、あったかいです…」

「運転してて、八戒は手や首が寒いんじゃないかなっていつも気になってたの」

「それで、隠れて編んでたんですか」

「びっくりさせたかったから」

微笑む の眼の縁は真っ赤です。
昨日は徹夜したんでしょうか。

胸が詰まって、何も言えない僕を、 が心配そうに見つめています。


「八戒?」

「…来年は、僕からもプレゼント、しますから…ずっと、傍にいて下さいね」

きつく、 を抱きしめると、やっとそう言えました。


「約束するから。生きていて。絶対に」

腕にかけた の指が、痛いほど力がこもっていました。

「あなたを置いてはいきませんから」

大きな瞳に浮かんだ涙を唇に受けると、
言葉では伝えきれないものを伝える手段は一つしかなくて…



★翌朝のおまけ★

「実は、もう一つ編んだの」

「何ですか?」

袋のようなナニモノか。リストバンドにしては、大きいし…何でしょう???

「ジープの腹巻vジープだって、寒い中走ってて、体冷えるでしょv」

は部屋の隅で眠っていたジープを抱き上げると、腹巻を着せてやっています。

「キュ?キューvv」

ハートマークを飛ばしつつ、 の肩にジープがまとわりつきます。

ジープの分際で、僕のライバルの群れに加わろうと?

「八戒、笑顔で睨まれると、怖い 」

おっと、 を怖がらせてしまいました。

を睨んだんじゃないですよv」

抱き寄せて髪にくちづけながら、さらにジープを睨むと青ざめて飛んでいきました。

腹巻したまんま飛ぶと、マヌケですね、ジープ。



R-Bloom in the heart様に掲載して頂いたドリその3。

初書きにして八戒さんが黒い。
タイトルにしても、これ、邦題は『見つめていたい』などと甘っちょろいですが
実際は(Sting本人も言うように)今で言えばストー○ーじみた偏執狂の歌なわけで
第一印象から、基本認識固まってますね、あはは。

「クリスマスで大サービスっぽくあれよ、総受けのUpするよ」
「…逆ハーでしょうが、それ」
もう一般的な意味でのドリーム書きとは名乗れません