「爆笑道外伝 黒ハチナマコの八戒さん」



姉さん、裏山の紅葉も、もうすぐ雪で覆われそうな季節になりました。

この仕事に就いて、今まで事故もなく、無事に過ごしてこられたことに

僕は感謝しています.......

「毎度様です。クロハチナマコで〜〜す。」

「ご苦労様。いつも元気で素敵な笑顔ですねぇ、八戒さん。
 笑う門には福来る♪あっ今日も1本買いますよ、いつものア・レ♪」

「大家さん、ありがとう御座います。この頃随分顔色いいんじゃないですか?
 毎日これ使ってるせいかも知れませんねぇ。モチロン僕も愛用してますけど。
 あっ、止まっていると起爆装置が!ではっ、またっ!」

「やれやれ、いつも忙しい方だ...」

時間に終われ、ノルマをこなさなくてはいけないこの仕事。

給料は良いのですが、その分過酷。

でも何かに追い詰められていないと、余計なことを考えてしまう僕には

時間との戦いであるこの仕事は天職かもしれません。

ゆっくりとした時間の流れは、嫌でも考えるヒマを与えてしまう。

ポッカリ穴が開いたようで....そこを遠慮もせず、風が通り抜ける。

その瞬間が切な過ぎてキライです。

「ではお疲れ様でした。」

「あ〜、ちょっとちょっと八戒君、『イケテル黒酢』の売り上げダントツで今月一番だよ!」

「ええ、お得意さまに熱心に勧めてますからね。独角所長。」

「もぉ社員の鏡だなぁ、君は。」

「そんな鏡だなんて(笑)もったいない。では、お先に失礼します。」

会社からすぐのところに、独身寮があり僕はそこの住人です。

寮母のヤオネさんは、所長の奥さんながらきさくな方で

もう少し料理の腕が良ければ言うことありません(泣)

 



「あらっ、お帰りなさい。八戒さん。先、御飯にします?」

「ありがとう御座います。ええ、先に。今日はなんです?」

「今日はですねぇ。初挑戦の合鴨のソテープロヴァンス風なんですよぉ。
 でもプロヴァンスって一体なんなんでしょうね(笑)プロパンガスなら
 使ってますけどぉ〜。」

「あのぉ、ヤオネさん....」

「はいっ?」

「そういう問題じゃないと思いますが....」

「へっ?」

「これ合鴨というよりは....」

「言うよりは?」

「あいなめじゃありませんか?」

「愛舐め?きゃ〜〜〜〜〜〜〜〜〜何言ってるんですか!」

「何言ってるって、魚でしょこれ。」

「あいなめ...あははははは。どっちにしろあいがあるから
 いーーーーーじゃないですか!!!」バンバンバン!!!

おばさん叩き三連発の照れ隠しヤオネさん。

「あっでも味はいつもより美味しいです。」

「いつも...より?」

「いえ、美味しいです!」

寮生活はこんな感じで和むんですが(笑)

それでも一人になるとまた、風が通り過ぎて行くんです。

部屋は白くて殺風景、無駄に時間を持て余す。

そんな時僕は決まってあそこに行くんです。

 ナマコ所長夫妻(笑)とアイナメ?

         bykyoco菩薩 Mind Atlas


ここで突然ですが配役の解説

八戒 → 宅配会社クロハチナマコのセールスドライバー

悟浄 → 三蔵とコンビのお笑い芸人修行中

天蓬 → 悟浄と同じアパート1階の住人。捲簾と同居中

清一色 → 銭湯”下賎の湯”の番台の主

          Next