エクスタシー温泉Revolutions Vol.4

「くーま、熊っ♪」

「何がそんなに嬉しいんだ?」

「だって熊がわさわさ一杯居るとこなんて見たことねーじゃん、面白いってば」

奥飛騨熊牧場』は、奥飛騨温泉郷に来ると決まってから

俺がずっと、行きたいと騒いでたので、今日は朝から皆でバスに乗って来た。

天気はピーカンだし、空気は透明で冷たくって、気分いい。

山に挟まれた道路脇から、山半分をその施設にしてあるみたいで、

登っていくと周りの山並みもよく見えた。

濃い緑の中に、所々黄色く染まっている木が交じっていて、とても綺麗だ。

「黄色くっても紅葉(もみじ)っていうのかなあ」

「黄色い葉って書いて黄葉ともいうんですが、もみじはもみじですよ。木の種類は何でしょうね」



想像してたみたいに、柵の中に広い牧場があって熊が遊んでるっていうんじゃなくて、

何頭ずつか檻に入ってるんだけど、色んな種類の熊がいるらしい。

「あ、『熊ちゃんのエサ』だって。な、エサやろー!」

檻に着く色あせた自販機に100円入れて、出てきたのは煙草の箱二つ合わせた位の紙箱で、

全麦シリアルに似たビスケットみたいのが、ざらざら入っていた。

「お菓子みてぇ…」

「食うなよ」

「ひっでー三蔵!俺だって熊のエサなんか食うわけないじゃん!」

そりゃ、ちょっと、食えそうだなって思ったけど、ほんとに食ったりしない!

順路の最初の檻に入っていたのはアライグマだった。





洞窟みたいなその檻の隅にちゃんと水が流れてる。

檻の前に仕切りがあって、客の手は届かないけど、後で見た他の檻よりは近くに寄れた。

柵の間から手を出してるところにエサを投げるけど、

このビスケットみたいのは軽くて、ふわっと風に逸れてしまう。

でもアライグマは俊足のショートっていう感じで飛び回って、巧くキャッチしては食べていた。

「あれー?洗わねぇな」

長い腕を伸ばして、かなりのコントロールで投げていた悟浄が呟いた。

「洗ったら無くなっちゃうって知ってるんでしょ、そんなコントみたいなことになっちゃ可哀相ですよ」

「まーな、食うしか仕事ねえみたいだしなこいつら」

「ショーには出ないんですか?」

「ネットで見たらツキノワだけだったぜ」

「じゃ、ツキノワに会いにいきますか」

ツキノワグマの檻は、通路から4、5メートル見下ろす形になっていた。

やっぱり、手が届いたりしちゃ危ないんだな。

家族単位か、群れ単位か、かなり広い檻が4つか5つ並んでいて、

温泉らしい湯気のたつ池が築いてあるところもあった。



人間を見ると、熊は人なつっこそうに寄ってきて、ごろんと転がってエサをねだる。

でも、アライグマより腹が減ってないのか、面倒なのか、丁度手の届くところに落ちないと拾って食わない。

三蔵はこの手のことには器用じゃないので、放ったエサが

熊の頭の上(視界から消えてしまうらしく全然拾わない)だの、

背中の陰だのに落ちてしまう。

「ちったあ有難がって拾いやがれ…!」

と、三蔵がキレかけたところに、

八戒が投げたエサがぽんと、転がっている熊の口に飛び込んだ。

周りの客が思わず手を叩き、熊も満足そうにもぐもぐやっている。

「あはは、僕って才能あるみたいですねv」

「フン、熊にエサやる才能があって何か役に立つのか

「ええ、野生の熊にでも襲われたときノーコンの人より助かる率は上がりますよ」

「ほう、貴様はこんな駄菓子みてぇなエサ抱えて歩いてんのか

野生の熊がこんなもんで餌付けされるとしても用意のいいこった」

「今日は滑舌がいいですね三蔵、負け犬の遠吠えも快調で」

そこらへんの温度が3℃ずつ位下がって、家族連れやカップルが急いで先に行く。

「誰が負け犬だ!そっちはたまたまツイてただけじゃねえか!」

「へえ、じゃあもうひと勝負します?」

「上等だ」

降り注ぐエサに閉口したらしい熊が、檻の奥の小山にのこのこ逃げていってしまうと、

二人はまたエサを買ってきて隣の檻でやり始めた。

「当分二人で遊んでんだから、先行こうぜ」

「う、うん…今朝からどうしたんだろ」

朝食のときから、三蔵はなんだか八戒につっかかっていて、

適当にあしらっていた八戒もここでキレたらしい。(注:原因は3.5回)

「ああ、まあ訳がなくもねえけど、つまんねーことだから気にすんな。

あいつらもたまにああやって大人げなくやりあってストレス発散してんだから」

確かに普段は二人とも、あんなにむきになったりしない。

喧嘩友達みたいなものなのかな。


写真提供・NN様

ここからややシリアスのごじょとごくが語る予定でしたが、
今宵は力尽きました…次回に続く!

其参へ  其伍へ(coming soon?)