014:ビデオショップ(前)
「もしもし?」
「あっ、あの俺三蔵さんの知人の沙悟浄と言う者ですが。」
「主任の...で、こんな夜中にどうしたんですか?」
「実は今病院で、三蔵がさっき道端で倒れちゃって。
それでそちらに電話するように頼まれて。」
「倒れたって?!」
電話の向こうの声のトーンが上がった。
「あっでも今は落ち着いたんだけど。」
「で、病院どこですか?俺今からすぐ行きます。」
「駅前の共済病院なんだけど、解ります?」
「ええ、解ります。ご連絡ありがとう御座います、では。」
悟浄が言葉を挟む隙も無しに、電話は一方的に切られた。
孫悟空...三蔵の部下だろうか?主任って言ってたな。
随分動揺していたけど。
自分以外に三蔵を心配されるのが癪に障った。
でもどんなヤツか見てみたい...そう思いながら病室へ戻った。
「連絡ついたよ。」
「すまん。」
「なぁんか慌ててたけど、今来るってさ。孫さん。」
悟浄が拗ねた子供のような目をしたのを三蔵は見逃さなかった。
「悟浄。」
「うん?」
「ちょっと。」
手でベッド脇に呼び寄せた。
「迷惑かけたな。」
「気にすんなよ。丁度お前に逢いたかったからさ。」
「もう大丈夫だ、明日仕事だろ?そろそろ帰れ。」
「イヤだ...けど、邪魔だよなぁ。うん、帰るよ。
なんかあったら電話して。病院にはこっちからかけられないっしょ。」
「嗚呼。」
「じゃ、俺行くわ。」
心とは裏腹に、あっさりと病室を出ると、廊下で小柄な男にすれ違った。
「三蔵無理し過ぎなんだよ。大丈夫か?」
背後でかすかに声が聞こえた。
あいつが、孫悟空?
なんかガキみてぇだ.....
認めたくはないが、何とも言えぬ胸中で病院を出た。
俺の知らない三蔵を知っている......
「やべぇ!」
信号待ちで止まっていると急に本来の自分の目的を思い出した。
「これ返さねーでどうするよ!」
Uターンしてバイクはビデオ屋へと向かって走り出した。
「はい、宜しいです。ありがとう御座いました。」
深夜だと言うのに店内はまだ賑わっている。
レンタル落ちで出物はないかと物色していると、覚えの有る
甘ったるい香りが立ち込めた。
「生きてたんだぁ....」
「失礼な、勝手に殺すなよ。」
「元気そうだね...」
「お前もな。」
014-2 ビデオショップ(後)
(今回は前後編です。
後編と015「ニューロン」をチキが書きます。)
013へ
Hybrid Theory Top